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役員報酬はいくらが得?相場や金額設定・節税のポイントを解説

役員報酬は、経営者の手取り額だけでなく、会社の利益や納税額、将来の資金繰りにも大きな影響を与える要素です。しかし、「役員報酬はいくらに設定するのが得なのか」「高く設定したほうが節税になるのか」と疑問を持つ経営者は少なくありません。

実際には、役員報酬を増やせば法人税を抑えやすくなる一方で、所得税や住民税、社会保険料の負担は増加します。一方で報酬を低く設定すると個人の税負担は軽減されますが、会社に利益が残ることで法人税負担が大きくなる場合があります。また、役員報酬は原則として事業年度の途中で自由に変更できないため、将来の利益予測や資金需要も踏まえて慎重に決める必要があります。

当記事では、役員報酬の基本的な仕組みや相場、税金との関係、適切な決め方のポイント、節税に役立つ具体的な方法などを分かりやすく解説します。

 

1. 役員報酬はいくらに設定するのが一番得になる?

役員報酬はいくらに設定するのが一番得になるのかは、一概には決められません。会社の利益水準や役員個人の税負担、社会保険料などを総合的に考慮して決定する必要があります。

役員報酬を高くすると、会社側では損金算入によって法人税負担を抑えやすくなります。一方で、役員個人の所得税や住民税、社会保険料の負担は増加します。反対に役員報酬を低く設定すると個人負担は軽減されるものの、会社に利益が残り法人税が増える可能性があります。

また、同業種や同規模の企業と比較して著しく高額な役員報酬は、税務調査で不相当に高額と判断されるリスクがあります。中小企業では相場を参考にしながら、無理のない範囲でやや低めに設定し、会社に一定の利益を残す方法が一般的です。

 

1-1. 役員報酬の相場はいくら?

役員報酬の相場は企業規模によって大きく異なります。中小企業の経営者が役員報酬を決める際は、自社と近い資本金規模の企業データを参考にしましょう。

民間給与実態統計調査には、資本金別の役員の給与の平均額が記載されています。

役員の給与の平均額

資本金階級 役員の給与の平均額
2,000万円未満 665.0万円
2,000万円以上 906.6万円
5,000万円以上 1,196.9万円
1億円以上 1,425.1万円
10億円以上 1,665.7万円
株式会社計 823.2万円

出典:国税庁「令和6年 民間給与実態統計調査結果」

役職別で見た場合の役員報酬の平均は、民間企業における役員報酬に記載されています。

役職別の役員報酬の平均額(従業員500人以上の企業の場合・2023年)

役名 役員報酬の平均額
会長 6,391.1万円
副会長 5,821.5万円
社長 5,196.8万円
副社長 4,494.4万円
専務 3,246.9万円
常務 2,480.0万円
専任取締役 2,086.6万円
部長等兼任 1,746.2万円
専任執行役員 2,368.9万円

出典:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」

平均額はあくまで参考値です。実際には業種や収益状況、将来の投資計画によって適切な金額は変わります。役員報酬を設定する際は、相場を基準にしつつ、自社の利益や資金繰りとのバランスを優先して判断することが大切です。

 

2. そもそも役員報酬とは?

役員報酬とは、会社の経営を担う役員に対して支払われる報酬のことです。

株式会社では、取締役や監査役などの役員に対して役員報酬を支給します。役員報酬は会社法に基づいて定款または株主総会で決定され、一定の要件を満たした場合に限り法人税法上の損金として認められます。

 

2-1. 役員報酬と給与の違い

役員報酬と給与の最大の違いは、役員報酬が「委任契約に基づく報酬」であるのに対し、給与は「雇用契約に基づく賃金」である点です。そのため、税務や労務に関するルールも大きく異なります。

役員報酬と給与の主な違いは次の通りです。

項目 役員報酬 従業員給与
契約形態 委任契約 雇用契約
支給対象 取締役・監査役など 従業員
残業代 支給なし 支給あり
最低賃金 適用なし 適用あり
日割り計算 原則不可 可能
雇用保険 原則加入不可 加入対象
労災保険 原則対象外 対象
損金算入 要件を満たす必要あり 原則全額可能
報酬変更 原則期首から3か月以内 随時変更可能

たとえば、従業員給与は勤務時間や労働実績に応じて支払われるため、残業代や最低賃金の規制を受けます。一方で役員は会社経営を担う立場であり、労働基準法上の労働者には該当しないため、残業代や最低賃金の適用を受けません。

また、税務上の取り扱いも大きな違いです。従業員給与は原則として全額を損金にできますが、役員報酬は定期同額給与などの要件を満たさなければ損金として認められません。そのため、役員報酬は単なる給料ではなく、税務戦略や資金繰りにも影響する重要な経営判断の1つと言えます。

 

2-2. 役員報酬の決め方

役員報酬は、株主総会などの正式な手続きを経て決定します。特に定期同額給与として損金算入する場合は、改定は原則として「事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日」までに行う必要があります。

役員報酬を決定する基本的な流れは下記の通りです。

1 株主総会で役員報酬の総額を決定する
2 取締役会または株主総会で各役員の報酬額を決定する
3 議事録を作成・保管する
4 決定した金額で定期的に支給する

まず、会社法に基づいて株主総会で役員報酬の総額を決議します。定款に定めがある場合を除き、多くの中小企業では株主総会で決定する方法が一般的です。

次に、取締役会設置会社では取締役会で各役員への配分額を決定します。中小企業や一人社長の会社では、株主総会で個別の報酬額まで決議するケースも少なくありません。

その後、株主総会や取締役会の議事録を作成し、適切に保管します。議事録は税務調査時に役員報酬の妥当性や損金算入の根拠資料として確認されることがあります。

なお、定期同額給与として損金算入するためには、原則として事業年度開始から3か月以内に報酬額を決定し、その後は同額で支給し続ける必要があります。役員報酬は自由に変更できるものではないため、会社の利益予測や資金繰りを踏まえて慎重に設定しましょう。

 

3. 役員報酬を決めるときに意識したい税金・控除の種類

役員報酬を決める際は、手取り額だけでなく所得税や住民税、法人税、社会保険料への影響を総合的に考えましょう。役員報酬を増やせば法人税の負担は軽減できますが、個人の税金や社会保険料は増加します。特に課税所得900万円を超えると所得税率が上がり、住民税や社会保険料の負担も重くなります。

役員報酬は、「会社の節税」と「役員個人の手取り」のバランスを考慮しながら、自社にとって最適な金額を検討することが大切です。

 

3-1. 所得税

所得税は、役員報酬を決める際に最も意識したい税金の1つです。役員報酬は給与所得として扱われるため、報酬額が増えるほど所得税の負担も大きくなります。

所得税は超過累進課税制度が採用されており、課税所得が高くなるほど税率も上昇します。課税所得が695万円超900万円以下の場合の税率は23%ですが、900万円を超えると33%へ引き上げられます。

一方で、役員報酬を低く設定すると所得税負担は軽減されますが、その分法人に利益が残りやすくなります。役員報酬の設計では、法人税とのバランスを見ながら所得税の税率区分も確認することが大切です。

 

3-2. 住民税

住民税も役員報酬に応じて増減するため、役員報酬の設定時に確認しておきたい税金です。住民税は所得に対して課税されるため、役員報酬が高いほど負担額も大きくなります。

個人住民税は、所得に応じて課税される「所得割」と、一定額を負担する「均等割」で構成されています。所得割の税率は原則10%であるため、役員報酬を増やせばその分だけ住民税も増加します。額面上は報酬が増えても、税金の増加によって想定より手取りが増えないケースもあるため注意が必要です。

 

3-3. 法人税

法人税は、税務上の益金から損金を差し引いて計算した所得金額に対して課税されます。役員報酬は一定の要件を満たせば損金算入できるため、報酬額を増やすほど会社の課税所得が減り、法人税の負担も軽くなります。たとえば年間利益が1,000万円の会社が役員報酬を100万円増額した場合、その100万円分だけ利益が圧縮され、法人税負担を抑えられる可能性があります。

ただし、役員個人の所得税や社会保険料は増加するため、法人税だけを基準に判断することはおすすめできません。会社と個人のトータル負担額を比較しながら、適切な役員報酬を設定することが大切です。

 

3-4. 社会保険料

社会保険料は、役員報酬の金額によって大きく変動する費用です。所得税や住民税と同様に、報酬額が高くなるほど負担額も増加します。

健康保険料や厚生年金保険料は、役員報酬を基に決まる標準報酬月額によって計算されます。そのため、役員報酬を引き上げると役員本人だけでなく、保険料を折半負担する会社側の負担も増えます。

特に課税所得900万円を超える水準では所得税の限界税率が上がるため、住民税や標準報酬月額等に応じた社会保険料も含め、手取り額とのバランスを確認することが大切です。

なお、短時間労働者に適用される「月額8.8万円以上」の賃金要件は、社会保険の適用拡大により撤廃される予定です。ただし、法人の役員でも、法人から労務の対償として経常的に報酬を受けている場合などは健康保険・厚生年金保険の被保険者となるため、役員報酬を決める際は社会保険料負担も含めてシミュレーションを行いましょう。

 

4. 役員報酬の金額設定を行うときのポイント

役員報酬は、単に手取り額を増やせばよいというものではありません。特に中小企業や一人社長の場合は、役員報酬の金額が会社と個人の両方のキャッシュフローに大きな影響を与えます。

税負担を抑えながら安定した経営を続けるためにも、法人税、所得税、住民税、社会保険料のバランスに加え、会社の資金繰りや税務上のルールも踏まえて設定する必要があります。

以下のようなポイントにもとづいて、役員報酬の金額設定を行いましょう。

 

4-1. 損金計上できる支払い方法にする

役員報酬を設定する際は、法人税の計算上で損金算入できる支払い方法を選びましょう。損金として認められなければ、会社の税負担が増加する可能性があります。

法人税法では、役員報酬は原則として損金不算入ですが、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当する場合は損金算入が認められます。中小企業では毎月同額を支払う定期同額給与が最も一般的です。

たとえば、期中に利益が増えたからといって自由に役員報酬を増額すると、増額分が損金として認められず、想定より法人税が高くなることもあります。役員報酬による節税効果を確実に得るためには、事業年度開始から3か月以内に適切な手続きを行い、税法上のルールに沿って支給することが大切です。

 

4-2. 会社の収益とのバランスを取る

役員報酬は、会社の利益や資金繰りとのバランスを考えて決めましょう。税金対策だけを目的に高額な役員報酬を設定すると、経営を圧迫する恐れがあります。

役員報酬は毎月発生する固定費であり、損金算入上の制約を受けるため、一度決定すると原則として事業年度中の変更はできません。そのため、将来の売上や利益予測を踏まえた上で、無理なく支払い続けられる金額を設定する必要があります。役員報酬を決める際は、法人税・所得税・社会保険料だけでなく、会社にどれだけ内部留保を残すべきかも含めて検討することが大切です。

 

4-3. 同業他社の役員報酬を参考にする

役員報酬を決める際は、同業種・同規模の企業の報酬水準を参考にするのがおすすめです。相場から大きく外れた金額は税務上のリスクにつながる可能性があります。

法人税法では、不相当に高額な役員報酬は損金として認められない場合があります。そのため、自社の売上規模や利益水準に対して妥当な報酬額であることを説明できるようにしておく必要があります。

たとえば、資本金1,000万円規模で利益もそれほど大きくない会社の役員が、上場企業並みの高額報酬を受け取っている場合、税務調査で妥当性を問われる可能性があります。また、従業員から見ても不公平感が生じる原因になりかねません。

国税庁の統計や業界団体の調査データなどを参考にしながら、自社の業績や役員の職責に見合った報酬額を設定することで、税務上も経営上も安定した運営につながります。

 

5. 役員報酬で節税を行うコツ

役員報酬による節税は、単純に報酬額を増減するだけではありません。所得の分散や非課税制度の活用、会社経費の適切な利用によって、会社と役員個人の税負担を抑えられる場合があります。

ただし、税務上の要件を満たしていない節税対策は否認されるリスクがあります。実際の業務実態や社内規程を整備した上で、適法な方法を選びましょう。

 

5-1. 配偶者や親族を役員にする

配偶者や親族が実際に経営へ関与している場合は、役員として報酬を支給することで節税につながる可能性があります。

日本の所得税は累進課税制度であるため、1人に高額な役員報酬を集中させるよりも、複数人に適正額を分散したほうが税率を抑えられる場合があります。たとえば代表者1人が年間1,200万円を受け取るよりも、代表者と配偶者がそれぞれ600万円ずつ受け取るほうが、世帯全体の税負担が軽減されるケースがあります。

ただし、配偶者や親族を形式的に役員へ就任させるだけでは認められません。経営への関与や業務実態がなく、報酬額が職務内容に見合わない場合は、税務上損金として否認される可能性があります。節税目的だけでなく、実際に経営や管理業務を担う役員として適切な報酬を設定することが大切です。

 

5-2. 役員の自宅を会社名義にする

役員社宅制度を活用すると、役員個人の住居費負担を抑えながら会社の経費を増やせるため、節税につながる場合があります。

たとえば会社が賃貸物件を契約し、役員へ社宅として貸与する場合、会社が支払う家賃の一部を経費として計上できます。役員は、賃貸料相当額以上の賃料を会社へ支払う必要がありますが、一般的な家賃負担より少なくなるケースもあります。

また、役員報酬として家賃分を受け取る場合は所得税や住民税、社会保険料の対象になりますが、社宅制度を利用するとその一部を圧縮できる可能性があります。ただし、役員が負担する賃料が著しく低い場合は給与課税の対象になるため注意が必要です。

 

5-3. 通勤手当や出張旅費の規定を定める

通勤手当や出張旅費規程を整備することも、役員の手取りを増やす有効な方法です。

通勤手当は、公共交通機関を利用する場合など一定の限度額までは非課税です。そのため、通勤費を役員報酬へ含めるのではなく、通勤手当として支給することで税負担を軽減できます。また、出張旅費規程を作成している会社では、役員も出張日当を受け取ることが可能です。社会通念上妥当な金額であれば、日当は会社の経費となり、受け取る役員側も原則として所得税や社会保険料の対象になりません。

ただし、規程が存在しない場合や金額が高額すぎる場合は否認される可能性があります。節税効果を得るためには、事前に社内規程を整備し、全従業員へ公平に適用することが重要です。

 

まとめ

役員報酬の最適な金額は、会社の利益や事業計画、役員個人の生活設計によって異なり、一律に「この金額が一番得である」とは言えません。大切なのは、法人税だけを見るのではなく、所得税や住民税、社会保険料を含めた会社と個人のトータル負担を把握した上で判断することです。

また、役員報酬は一度決定すると原則として事業年度中に自由に変更できないため、将来の売上予測や資金繰りを踏まえた設計が欠かせません。さらに、役員社宅制度の活用や通勤手当・出張旅費規程の整備、実態のある親族への報酬分散などを適切に行うことで、合法的な節税につながる可能性があります。

役員報酬は税務と経営の両面に影響するため、自社の状況に合わせて税理士などの専門家へ相談しながら最適な金額を検討するとよいでしょう。