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役員報酬の社会保険料額はいくら?計算方法や加入義務がないケースを解説

会社設立時や役員報酬の改定時には、税金だけでなく社会保険料も資金計画への織り込みが必要です。役員報酬を低くすれば負担がそのまま減るとは限らず、最低等級の保険料がかかる場合もあります。

当記事では、役員の社会保険加入義務を整理した上で、標準報酬月額を使った計算方法を解説します。東京都における2026年度の料率による金額例や、複数社の役員を兼任する場合の扱い、実務上の注意点も確認しましょう。

 

1.役員には社会保険加入の義務はある?

株式会社や合同会社などの法人は、1人会社を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。ただし、会社が適用事業所であることと、すべての役員が被保険者になることは分けて考える必要があります。

法人の経営に参画する経常的な労務を提供し、その対価として役員報酬を経常的に受け取る役員は、原則として、75歳未満は健康保険、70歳未満は厚生年金保険の被保険者となります。判断基準となるのは、経営に関する経常的な労務の提供と、その対価としての経常的な報酬があるかどうかです。

役員会等への出席にとどまり、他の役員への連絡調整や職員への指揮監督を行わず、求めに応じて意見を述べるだけの役員は、原則として適用対象外と判断されます。旅費などの実費弁償や、役員会等への出席に対して支払われる報酬のみを受け取る場合も同様です。

ただし、定期的な出勤の有無は判断要素の1つです。事業所外から役員や職員へ指示を出すなど、法人経営に継続的に参画して労務を提供し、その対価として報酬を継続的に受けている実態が認められれば、定期的に出勤していない役員も被保険者となります。

 

1-1.社会保険が適用されない事業所はある?

法人は、業種や従業員数を問わず、被保険者となるべき人がいれば、原則として強制適用事業所です。そのため、役員報酬を受ける代表者がいる会社は、「従業員がいない」「1人会社である」という理由だけで適用対象外にはなりません。

強制適用の対象外となり得るのは、主に一部の個人事業所です。従業員が常時5人未満の個人事業所や、農林漁業・一部のサービス業などは、対象外となる場合があります。ただし、従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して認可を受ければ、任意適用事業所として加入できます。

出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」

法人に無報酬の役員しかおらず、被保険者となるべき人がいない場合は、適用事業所の要件を満たしません。また、報酬を受けていても、法人の経営に対する経常的な労務の提供がない役員は、原則として被保険者資格が認められません。

 

1-2.役員報酬が極めて低い場合は社会保険加入の義務がなくなる?

役員報酬が低いという理由だけで、社会保険の加入義務がなくなるわけではありません。役員が加入できる最低報酬額は一律に定められておらず、報酬額と業務実態を合わせて判断します。

経営悪化などにより、社会保険に加入中の役員が報酬を一時的に数円まで引き下げたとしても、引き下げた事実だけで資格はなくなりません。今後も報酬が支払われる見込みがあり、一時的な措置と判断される場合は、低額であることだけを理由に資格を喪失させるのは妥当ではないとされています。

ただし、報酬が1円など、業務内容に照らして相応の対価と言えるか疑わしい場合は、報酬決定の経緯や業務内容、他の職との兼務状況などを確認した上で、被保険者資格が個別に判断されます。加入資格が認められた場合、実際の役員報酬が1万円でも、健康保険は5万8,000円、厚生年金は8万8,000円という最低の標準報酬月額を使って保険料を計算するルールです。

出典:協会けんぽ「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

 

2.役員報酬にかかる社会保険料の計算方法

役員報酬にかかる社会保険料は、報酬額に保険料率を直接掛けるのではありません。標準報酬月額を確認し、保険料率を掛けた上で本人と会社の負担額を算出します。

 

2-1.標準報酬月額を確認する

毎月の役員報酬を保険料額表の報酬月額の範囲に当てはめ、標準報酬月額を確認します。対象には基本の役員報酬だけでなく、通勤手当や住宅手当、食事・社宅などの現物給与も含まれる場合があります。

資格取得時の算出のもとになるのは、今後受け取ると見込まれる報酬額です。その後は、原則として4月から6月までの報酬をもとに見直され、9月から翌年8月まで適用される仕組みです。固定的賃金が変わり、一定の要件を満たした場合は、途中で随時改定が行われます。

 

2-2.健康保険・厚生年金の額を調べる

標準報酬月額が分かったら、事業所所在地を管轄する協会けんぽ支部や健康保険組合の保険料額表を確認します。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なるため、所在地に合う料率を使いましょう。

協会けんぽ東京支部では、2026年3月分(4月納付分)から健康保険料率9.85%、介護保険料率1.62%が適用されています。厚生年金保険料率は18.3%です。さらに、2026年4月分(5月納付分)から、子ども・子育て支援金率0.23%が適用されています。40歳から64歳までの役員には介護保険料率1.62%が加わります。

計算式は、次の通りです。

  • 健康保険料=健康保険の標準報酬月額×健康保険料率
  • 厚生年金保険料=厚生年金の標準報酬月額×18.3%
  • 介護保険料=健康保険の標準報酬月額×介護保険料率
  • 子ども・子育て支援金=健康保険の標準報酬月額×0.23%

出典:協会けんぽ「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

 

2-3.労使折半で本人・会社負担を算出する

健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金は、原則として本人と会社で折半します。計算した全額の半分が、それぞれのおおよその負担額です。

会社側には、折半分に加えて子ども・子育て拠出金も発生します。2026年度の拠出金率は0.36%で、算定基礎は厚生年金の標準報酬月額です。名称が似ていますが、子ども・子育て拠出金は会社のみが負担し、役員報酬からは控除しません。

実際の控除額は、端数処理によって1円程度ずれる場合があります。試算には保険料額表を使い、納付額は年金事務所などから届く通知書で確認しましょう。

 

3.【役員報酬額別】社会保険料額の例

ここでは、会社所在地を東京都、役員は40歳未満、配偶者1名を健康保険の被扶養者とし、賞与はないものとして試算します。被扶養者である配偶者について、追加の健康保険料はかかりません。

以下では、役員報酬の月額が1万円、50万円、100万円の場合を比較します。1万円のケースは、被保険者資格が認められた前提です。

役員報酬月額 健康保険の標準報酬月額 厚生年金の標準報酬月額 役員本人の月額負担 会社の月額負担
1万円 58,000円 88,000円 約10,975円 約11,292円
50万円 50万円 50万円 70,950円 72,750円
100万円 98万円 65万円 108,867円 111,207円

※2026年4月分(5月納付分)以降の協会けんぽ東京支部の保険料額表をもとに算出しています。会社負担には、各保険料・支援金の折半分と、会社のみが負担する子ども・子育て拠出金を含めました。

出典:全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」

さらに、40歳から64歳までの場合、本人と会社にそれぞれ、表の上から順に約470円、4,050円、7,938円の介護保険料が上乗せされます。

役員報酬が1万円のケースでは、本人負担分が報酬額を上回るため、役員報酬から全額を控除できません。不足額を役員から徴収するなど、実務上の処理が必要です。低い報酬に設定しても、社会保険料が同じ割合で下がるとは限らない点に注意しましょう。

 

4.複数社の役員を兼任している場合の社会保険料は?

複数社の役員を兼任している場合は、各社で被保険者の要件を満たすかを個別に判断します。1社だけで要件を満たす場合は、要件を満たしている会社の報酬のみが計算対象です。

2社以上で加入要件を満たすときは、役員本人が主たる事業所を選び、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を事実発生から10日以内に提出します。各社の役員報酬を合算して標準報酬月額を決定し、保険料は報酬額の割合で各社へ按分されます。

 

まとめ

法人の経営へ継続的に関与し、業務の対価として役員報酬を受ける役員には、原則として社会保険の加入義務があります。報酬を極端に低くしても、業務実態や支払いの継続性によっては加入対象となり、最低の標準報酬月額にもとづく保険料が発生します。

役員報酬を設定・改定するときは、社会保険料だけでなく、法人税や所得税、会社と個人の資金繰りも合わせて試算することが大切です。自社に適した金額を判断しにくい場合は、税理士や社会保険労務士などの専門家へ相談しましょう。