コラム
【初心者向け】現金出納帳の書き方や注意点を分かりやすく解説
現金出納帳は作成が必須の書類ではありません。ただし、税務調査や青色申告の控除のためにも重要な書類であり、書き方や取り扱いを誤ると問題になる可能性があります。初心者が初めて記帳をするからと言って、不正確な書き方をすれば税務リスクが高くなるので、正しGPい書き方を知っておくのが大切です。
この記事では、初心者向けに現金出納帳の基本的な書き方、日々記帳する際の注意点、小口現金出納帳との違いなどについて分かりやすく解説します。
1.現金出納帳とは
現金出納帳(げんきんすいとうちょう)とは、現金の入出金を取引ごとに記録するための帳簿です。会社や事業で日々発生する「現金を支払った・受け取った」といった動きを明らかにし、手元の現金がどれくらいあるかを常に把握できる状態にする目的で作られます。金銭出納帳の別名で呼ばれる場合もあります。
会計帳簿には会社法で定められた作成義務がある「主要簿」と、任意での作成が認められている「補助簿」に分類されます。うち、現金出納帳は補助簿にあたるため、必ずしも作成する必要はありません。
しかし、キャッシュレス化が進んだ現在でも現金取引は完全にはなくならず、小規模な支払いや集金などに対応する必要があることから、現金出納帳は重要な帳簿の1つです。
現金出納帳に日々記帳すれば、現金残高と帳簿残高のずれを防げ、経理ミスや不正の早期発見につながります。また、法人や個人事業主が青色申告の控除を受けるときに、帳簿保存が要件となる場合もあるため、正確な記録が欠かせません。
現金出納帳について詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
1-1.小口現金出納帳と現金出納帳の違い
現金出納帳と同様に現金管理に使う帳簿として、事務所や店舗に備えてある少額の現金(小口現金)を記帳の対象とした「小口現金出納帳」があります。いずれも現金の入出金を記録する帳簿ですが、管理する金額と用途が違います。
現金出納帳は、企業全体の現金の動きを一括で管理する目的で作られ、日々の取引全般を対象としているため、特に金額の制限がありません。
一方、小口現金出納帳は主に消耗品や交通費、雑費などの少額支払いを記録します。
こうした特徴もあって、現金出納帳は主に経理部門が一元管理する帳簿書類なのに対し、小口現金出納帳は各現場単位で記帳されるケースが多い帳簿書類です。小口現金は各部署に分けて管理されるため、部署単位で出納帳を設けることで、業務の効率化と経費の透明化を図れます。
2.【初心者向け】現金出納帳の書き方
現金出納帳の形式に決まりはありません。しかし、現金出納帳に記録ミスがあったり、不明瞭な記載項目があったりすると、後の経理業務や税務申告、経営判断に悪影響を及ぼす恐れがあります。
以下では、現金出納帳に記載すべき基本項目と、初心者でも実践できる書き方の流れを解説します。
2-1.現金出納帳の記載項目
現金出納帳には、主に以下の6項目を記入します。
日付 | 現金の出入りがあった日を記載します。領収書に日付がある場合でも、実際に現金を動かした日を記載するのが基本です。 |
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勘定科目 | 取引の性質を表す分類項目です。たとえば消耗品の購入であれば「消耗品費」、交通費の支出なら「旅費交通費」と記載します。 |
摘要 | 「○○銀行へ現金預け入れ」「取引先への接待のため、××レストランへ現金支払」など、取引内容や目的、相手先などを誰が見ても分かる形で記載します。 |
収入額 | 現金が増えた場合に記入する欄で、税込金額を記載します。 |
支出額 | 現金を支払った場合に記載します。こちらも税込金額で記入します。 |
残高 | 入金があれば前回残高に加算し、出金があれば減算します。 |
記載の際は、支出や収入の目的を先に摘要欄に書くと、どの勘定科目を使うべきか判断しやすくなります。また、摘要には「軽減税率対象品」など、税区分の補足もあると税務処理の際に便利です。
2-2.現金出納帳を書く手順
現金出納帳に記入するときは、以下の流れに沿って記帳するとスムーズです。
1 | 最初の行に現金残高を記載する |
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帳簿を付け始める際は、1行目にその時点での現金残高を記載し、摘要欄に「期首繰越」「前月繰越」「元入金」と書き、残高欄に残金を書き入れます。 | |
2 | 現金取引ごとに日付・勘定科目・適用・収入額・支出額・残高を記載する |
現金の入出金が発生したら、取引ごとに1行ずつ記帳します。残高は直前の行から加減算して計算します。 | |
3 | 期末の締めを行う |
月末や期末を迎えたら、行の下に二重線を引いて締め、下に「○月合計」などと記して入金額と出金額の合計を書いた上で、「次月繰越」として残高を記載します。 | |
4 | 期が変わる際に新しいページへ繰り越す |
月が変わった場合やページがいっぱいになった場合は、摘要欄に「前頁より繰越」と記入して、前月の残高を新しいページに引き継ぎます。 |
3.初心者が現金出納帳を書くときの注意点
税務トラブルを防ぐためにも、現金出納帳は正しく扱う必要があります。以下の注意点は、初心者の方にとって帳簿管理を始めるときの基本となるため、押さえておきましょう。
記帳時に押さえておくべき5つのポイントを解説します。
3-1.毎日記帳する
現金出納帳は、現金の動きがあったその日に記帳することが大切です。記帳を後回しにすると、取引の内容や金額を忘れてしまい、記録の正確性が失われます。取引の都度、もしくは少なくともその日の終わりには記録する習慣をつけましょう。
日々記帳を続けることで、常に正しい現金残高を把握でき、万が一の過不足もすぐに発見できます。現金の不一致が続くと、税務署から管理の甘さを疑われることもあるため、「後でまとめて」は避け、こまめに記録するルールを作るのが大切です。
3-2.記入ミスをしても消さない
帳簿に記入ミスをした場合、修正テープや修正液で消してはいけません。現金出納帳は、税務署に提出する帳簿としての役割もあるため、記録の改ざんと誤解される恐れがあります。誤記があったときは二重線を引いて訂正し、横や新しい行に正しい内容を記入してください。
また、鉛筆や消せるボールペンの使用も避けましょう。パソコンで記帳する場合は、修正履歴が残る会計ソフトを利用してください。
3-3.個人事業主は事業とプライベートでお金を分ける
個人事業主は、事業用とプライベート用の現金を明確に区分することが重要です。曖昧に処理してしまうと、税務調査で経費の否認や修正申告の対象になるリスクがあります。また、事業使途の融資を生活費に使った場合、融資元からペナルティを受ける可能性が高いため、転用していない証明として現金出納帳に分けて記帳するのが大切です。
たとえば、事業用のお金を使い、自分のためにスーパーで5,000円分の買い物をしたとします。この場合、「(借方)事業主貸 5,000円/(貸方)現金 5,000円」と仕訳し、現金出納帳には出金欄に金額、科目には「事業主貸」と書きましょう。反対に、プライベートのお金を事業に使ったときは「事業主借」を用いて記帳します。
3-4.領収書(レシート)と一緒に保管する
領収書の保管期間は原則7年間(白色申告者は5年)と定められており、保管していなければ罰を受けるリスクがあります。記帳した内容と対応する領収書やレシート、請求書は必ず保存しておきましょう。どうしても記帳が後日になったときや、税務調査に対応する際に証拠として使えます。
貼り付ける際は、日付順に整理し、重ならないようにスクラップブックやファイルにまとめて保管すると確認しやすくなります。また、感熱紙のレシートは時間が経つと文字が消える可能性があるため、コピーをとっておくか、日光の当たらない場所での保管を心がけましょう。
レシートを保管する場所に困る場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応した会計ソフトを使い、デジタルデータで保管するのも1つのやり方です。
一部の交通費や香典代などの領収書が発行されないケースでは、「出金伝票」を用いて支出の内容・日付・金額を記録することで代用できます。
3-5.残高と現金が合わなくても補填しない
帳簿上の残高と実際の現金残高が一致しない場合でも、自己判断で差額を補填して帳尻を合わせるのは避けましょう。
まずは原因を調査し、記帳ミス・計算ミス・記帳漏れがないかを確認しても原因が特定できないときは、「現金過不足」という勘定科目を使って一時的に処理します。
現金過不足は、後日原因が判明した時点で「雑損失」や「雑収入」として処理し直すことが必要です。現金のずれをそのままにすると、不正や杜撰な管理を疑われるリスクがあります。
もし頻繁に現金過不足が発生している場合は、不正防止のためにも再発防止策として業務フローや記帳ルールの見直し、ダブルチェック体制の導入などを検討すべきです。また、税理士に自社の税務ガバナンスについてチェックしてもらい、体制改善を進めるのもよい方法です。
4.青色申告で控除を受けるときは現金出納帳が必須
確定申告にあたって青色申告を行うと、最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。ただし、控除を受けるためには、複式簿記に基づいた記帳と、仕訳帳・総勘定元帳の作成が必要です。加えて、現金出納帳や預金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳といった補助簿も、正確な会計処理を行う上で重要な帳簿書類とされます。
現金出納帳は、現金取引の詳細を記録する補助簿として、主要簿の信頼性を補強する役割を果たします。現金の出入りが多い事業者にとっては、税務調査時の説明資料としても有用です。
記帳義務がないからと言って現金出納帳を作っていないと、青色申告をしても控除を受けられないリスクが高まります。面倒に感じても現金出納帳をはじめとした補助簿を作るのが大切です。
まとめ
現金出納帳を初心者がつけるときは、毎日こまめに記帳し、誤記を修正テープなどで消さずに訂正する必要があります。また、領収書を帳簿とセットで保管し、残高と残金に差額が発生した場合は補填せずに、記帳ミス・計算ミス・記帳漏れがないかを確認しましょう。
また、個人事業主の場合は事業用とプライベート用の資金を分けておかなければ、税務調査の際に否認を受けるリスクが高まります。いずれにしても、青色申告で控除を受けたい場合は補助簿も含む帳簿書類を正確に記帳する必要があります。適切に書くのが難しい場合は、税理士によるサポートを受けるのもおすすめです。