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キャッシュフロー計算書の見方とは?各区分のチェックポイントを解説

「キャッシュフロー計算書」は企業の財務諸表の1つで、企業の現金および現金同等物の流れを詳しく把握できる重要な帳票です。損益計算書が「企業がどれだけ儲かったか」を示すのに対し、キャッシュフロー計算書は「企業にお金がどれだけ入って、どれだけ出て行ったか」を示します。

キャッシュフロー計算書は企業の現状を把握し、経営状態が健全かどうか確認する際に役立ちます。したがって経営や投資判断を行うにあたっては、キャッシュフロー計算書の見方を知っておくのが重要です。

当記事では、キャッシュフロー計算書とは何かといった基礎的な内容から、キャッシュフロー計算書の見方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

 

1.キャッシュフロー計算書(C/F)とは

キャッシュフロー計算書(C/F)は、企業の一定期間における現金および現金同等物の流入と流出の状況を示す財務諸表の1つです。上場企業に対して金融商品取引法に基づき作成が義務付けられています。

キャッシュフロー計算書は、貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書とともに、決算短信や有価証券報告書に掲載されます。未公開企業に関しては、期末決算書や税務申告書においてキャッシュフロー計算書の作成は必須ではありません。

 

1-1.キャッシュフロー計算書とほかの計算書類の関係

キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流入と流出を示します。一定期間における現金の入出金を、営業活動、投資活動、財務活動の3つに区分して表示します。

一方で、損益計算書は一定期間における企業の収益、費用、利益を示し、経営成績を評価するための指標となる財務諸表です。損益計算書では、売上高から売上原価を差し引いて得られる売上総利益や、販売費及び一般管理費を考慮した営業利益、営業外の収益や費用を加味した経常利益などが記載され、企業の収益性を詳細に分析することが可能です。

貸借対照表は、企業のある時点における財政状態を示す財務諸表の1つで、資産や負債の現状を把握することが可能です。資産の部、負債の部、純資産の部の3つがあります。

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1-2.キャッシュフロー計算書を作る目的

キャッシュフロー計算書を作成する目的は、企業の現金の動きを詳細に把握し、その情報を基に経営判断をより的確に行うためです。

企業の現金の入出金を正しく把握することで、資金が不足している時期や、反対に余剰資金がある時期を把握できます。資金繰り計画を立てやすくなり、資金ショートを防ぎやすくなるでしょう。

また、損益計算書は企業の収益性を示しますが、キャッシュフロー計算書は実際の現金の流れを示します。両者を比較することで、企業の経営パフォーマンスをより多角的に評価できます。例えば、利益が出ていても、実際の現金が減っている場合は、注意が必要です。商品やサービスを販売しても、代金がすぐに回収されない場合、売掛金が増加します。売掛金は、損益計算書上では売上高として計上されますが、現金化されていないため、キャッシュフローには直接反映されません。

 

2.キャッシュフロー計算書の見方

キャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動という3つの主要な区分に分かれており、それぞれのキャッシュフローが企業の経営状況を示します。以下では、3つのキャッシュフローについて詳しく紹介します。

 

2-1.営業活動によるキャッシュフロー(営業キャッシュフロー)

営業キャッシュフローとは、企業の本業である事業活動から生み出される現金の増減を表す指標です。つまり、企業が日々の営業活動を通じて、どれだけのお金を稼ぎ、どれだけのお金を支払ったのかを示しています。具体的には、商品やサービスの販売、仕入れ、給与支払いや経費の現金出費といった取引が挙げられます。

営業キャッシュフローがプラスであることは、企業が本業で収益を上げていることを意味します。マイナスであれば、本業の収益性に問題があるか、売上の回収がうまく行っていない可能性もあるでしょう。

営業キャッシュフローを構成する要素は、主に以下の通りです。

増加させる要素

商品やサービスの販売から得られる現金収入、売掛金の回収、保険金の受け取りなど

減少させる要素

商品仕入れによる現金支出や法人税の支払い、人件費、その他の経費など

営業キャッシュフローがマイナスであっても、必ずしも深刻な問題を示しているというわけではありません。例えば、売上の増加に伴い仕入れが増えた場合など、一時的な要因であることも考えられるでしょう。

 

2-2.投資活動によるキャッシュフロー(投資キャッシュフロー)

投資キャッシュフローとは、企業が将来の成長のために、設備投資や有価証券の購入など、さまざまな投資活動を行った結果、現金がどのように増減したのかを示す指標です。

投資キャッシュフローに含まれる項目としては、固定資産の取得や売却、投資有価証券の取引、預入期間が3か月を超える定期預金の処理、貸付金の貸付や回収などが挙げられます。

投資キャッシュフローがマイナスであるからといって必ずしも悪い兆候ではありません。投資が行われることは成長を目指す企業にとって必要な活動であり、短期的にはキャッシュフローがマイナスに傾くことがしばしばあります。このような場合でも、将来的にその投資が実を結ぶ可能性は十分にあるため、一概に企業の経営状態を悪化と判断することはできません。

 

2-3.財務活動によるキャッシュフロー(財務キャッシュフロー)

財務キャッシュフローとは、企業が資金調達や返済など、財務的な活動によって現金がどのように増減したのかを示す指標です。企業が銀行からお金を借りたり、株を発行したり、借金を返済したりといった、資金調達に関するお金の流れを表しています。

財務キャッシュフローの構成要素としては、借入金の収入や返済、社債発行や償還、株式発行、自己株式の取得や売却、配当金の支払いといった項目が挙げられます。

例を挙げると、借入金の増加は財務キャッシュフローへプラスの影響を与え、借入金の返済や配当金の支払いが行われるとマイナスの影響を与えます。そのため、財務キャッシュフローにおいても、単にプラスであればよいというわけではなく、全体の状況を踏まえた上で、その流れを把握することが重要です。例えば、企業が資金調達のために多くの借入れを行っている場合、その資金がどのように活用されているかがポイントとなります。

 

3.キャッシュフロー計算書の+-パターンごとの注意点

営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つが、それぞれプラスかマイナスかによって、企業の財務状況や将来性について異なる示唆が得られます。

以下に、各パターンの注意点と、それぞれの状況が意味する可能性について解説します。

キャッシュフロー計算書の状態 企業活動の状態
営業CF+、投資CF+、財務CF+ 営業活動が順調に進んでいることに加え、資産の売却や資金調達を行っていることを示す。事業転換の可能性がある。
営業CF+、投資CF+、財務CF- 営業活動や資産売却によって得た資金で借入金の返済を進めており、企業がスリム化を図っていることがうかがえる。
営業CF+、投資CF-、財務CF+ 営業活動から得た資金と資金調達によって設備投資を行っている。積極的な投資行動。
営業CF+、投資CF-、財務CF- 営業活動からの資金で返済を行いつつ、同時に投資活動も行っている。通常、このような企業は経営状態が良好である。
営業CF-、投資CF+、財務CF+ 営業活動が不調でありながら、資産の売却や借入によって資金調達を行っているため、企業にとって要注意な状況。
営業CF-、投資CF+、財務CF- 営業活動が不振な中、資産を売却し、その資金で借入金の返済を進めている。
営業CF-、投資CF-、財務CF+ 営業活動が不調であるにもかかわらず、資金調達を行って設備投資を実施している。営業活動のマイナスが一過性のものであるか、企業再建の可能性がある。
営業CF-、投資CF-、財務CF- 営業活動が不調でありながら借入金の返済や設備投資を行っている。過去に相当の利益を上げていた可能性が考えられる。

上記はあくまで一般的に考えられる示唆ですが、これらのパターンを理解しておくことで、企業のキャッシュフローを分析しやすくなるでしょう。

 

まとめ

キャッシュフロー計算書は、企業の資金の流れを把握するための重要な財務諸表で、3つの区分があります。

営業キャッシュフローは、企業の主たる営業活動から生じる現金の流れを示したものです。投資キャッシュフローは、設備投資や資産の売却、購入に関連する現金の動きを示します。財務キャッシュフローは、資金調達や返済に関するキャッシュの動きを反映したものです。

キャッシュフロー計算書をはじめとした財務諸表をもとに、投資家や経営者は企業の資金運用状況を的確に把握し、適切な意思決定を行うことが大切です。