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事務用品を購入した費用の勘定科目とは?使い分け方・仕訳方法を解説

オフィスの事務用品の購入費用を「消耗品費」の勘定科目で処理するか、それとも「事務用品費」と分けて処理するか悩む方もいるでしょう。また、備品費や雑費といったほかの勘定科目として計上するのは適切かどうかも、会計処理の難しい点です。もし勘定科目の区別が曖昧だと、処理ミスが増え、結果として税務署からの指摘リスクが増大する可能性があります。

この記事では、各種事務用品を経費計上する際の勘定科目や、事務用品費と消耗品費の使い分け方、適切な仕訳方法について解説します。

 

1. 事務用品の購入費用の勘定科目とそれぞれの違い

業務で使用する事務用品の購入費用は、「消耗品費」の勘定科目で経費計上が可能です。特別な理由がある場合には消耗品費中の事務用品の購入費用にあたる部分を「事務用品費」として区別し、経理処理する方法もあります。少額かつ一時的な事務用品の購入費用は、「雑費」の勘定科目で経費計上するのも1つのやり方です。

一定の金額を超える高額な事務用品を購入した際には原則として「備品」などの勘定科目で固定資産に計上し、減価償却する処理が必要です。

つまり、事務用品の購入費用を費用計上する際の勘定科目の主な種類は、消耗品費・事務用品費・備品費・雑費です。以下では、各勘定科目の概要と事務用品の購入費用を経理処理する際の注意点を紹介します。

 

1-1. 消耗品費

会計処理上の消耗品とは、使用可能期間が1年未満で、取得価額が10万円未満のものです。事務用品の中ではコピー用紙・封筒・文房具などが消耗品にあたり、購入費用を「消耗品費」の勘定科目で処理できます。

国税庁の公表する消耗品費の定義は、以下の通りです。

帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費

使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費

取得価額が10万円未満であるかどうかは、税込経理方式又は税抜経理方式に応じ、その適用している方式により算定した金額によります。

引用:国税庁「消耗品費」引用日2024/09/11

なお、消耗品費の取得価額は、通常取引する際の1単位ごとに判定します。たとえば、4万円のオフィスチェアと8万円のデスクを別々に購入する場合は取得価額が10万円未満となるため消耗品費として計上できます。しかし、オフィスチェアとデスクのセット商品を購入した際には、「取得価額12万円」と判定され、備品費としての計上が必要になる点には注意しましょう。

 

1-2. 事務用品費

事務用品費とは、事務作業に使用する目的で購入したものを処理する際に使用する勘定科目です。以下は、事務用品費で購入費を処理できる事務用品の具体例を示します。

  • ボールペン
  • 鉛筆
  • 付箋
  • 消しゴム
  • ノート
  • メモ帳
  • 封筒
  • コピー用紙
  • のり
  • セロハンテープ
  • 穴あけパンチ
  • はさみ
  • ホッチキス
  • 請求書、領収書用紙
  • 名刺
  • 小切手帳
  • 電卓
  • 印鑑 など

上記の他、事業に関係する資料をコピーした際の印刷費用は、事務用品費で処理できます。販売促進目的で使用するポスター・チラシなどの印刷費用は事務用品費でなく、広告宣伝費に含めるほうが適切です。

 

1-3. 備品費

取得価額が10万円以上かつ使用可能期間が1年以上の事務用品を購入した場合には原則、固定資産として処理し、減価償却期間の間はかけて経費計上する必要があります。

ただし、以下のような場合は特例があります。

特例名 要件 内容
少額減価償却資産 取得価額10万円以上30万円未満
常時使用する従業員の数が500人以下の中小企業あるいは個人事業主
取得価額に相当する金額を損金の額に算入できる
一括償却資産 取得価額が10万円以上20万円未満 減価償却資産の全部または特定の一部を一括し、一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1の金額を必要経費にできる

出典:国税庁「一括償却資産とは」

出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

2026年3月31日まで、要件を満たす中小企業や個人事業主が10万円以上30万円未満の減価償却資産を購入した場合、少額減価償却資産の特例の利用が可能です。特例を利用すると事務用品の場合には「備品費」などの勘定科目で、購入費用の全額をその年度の損金へ算入できます。

出典:中小企業庁「少額減価償却資産の特例」

取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産を購入した場合には企業の規模を問わず、一括償却資産として扱って、特例的な経費処理を取ることも可能です。事務用品の購入費用を一括償却資産として処理する場合には「備品費」などの勘定科目を使用して、対象資産を初めて使用した年度から3年間で均等割し、経費計上できます。

出典:国税庁「一括償却資産とは」

 

1-4. 雑費

雑費とは、他の経費に該当しない費用を仕訳する際に使用する勘定科目です。たとえば、オフィスで使用する殺虫剤のように分類ルールの判断に迷うものを購入した際には、雑費を使用できます。

出典:国税庁「雑費」

ただし、金額の大きいもしくは継続的に利用している事務用品の購入費用は、雑費に含められません。

 

2. 事務用品費と消耗品費を使い分けるメリット

事務用品の購入費用を消耗品費として経費処理する方法も、会計上は適切です。ただし、事務用品費と消耗品費を明確に区別して処理する方法には、以下のメリットがあります。

  • 消耗品費の金額を抑えられる
    事務用品費の勘定科目を使用すると消耗品費の金額を抑えられ、税務調査で指摘を受けるリスクを軽減できます。
  • 帳簿をチェックしやすくなる
    事務用品費と消耗品費を使い分けるとそれぞれに関する支出を一目で把握できるため、帳簿をチェックする作業の効率化が可能です。

消耗品費の計上金額が過剰になった場合には、税務署に経理処理の信頼性を疑われる可能性があります。税務調査や会計調査で内訳を精査されると手間や時間を取られるため、経営上のリスク回避手段として、勘定科目を分けることは重要です。

小規模な企業で事務用品の購入費用が多額にならない場合、無理に勘定科目を使い分ける必要はないものの、会計処理には継続性の原則が存在します。事務用品の購入費用を消耗品費に含める場合は原則、将来的にも同様の処理を行う必要があります。

 

3. 事務用品の購入費の仕訳方法

事務用品の購入費用は適正な勘定科目を使用して状況に応じた方法を選択し、正しく仕訳してください。以下では、事務用品の購入費用の仕訳例と経理処理を行う際のポイントを紹介します。

 

3-1. 事務用品を購入したときの仕訳方法

事務用品費や消耗品費は、購入時点で全額を経費計上することが可能です。以下は、備蓄用の単三電池30本を現金で購入した場合の仕訳例を示します。

借方 貸方 摘要
事務用品費 1,000円 現金 1,000円 単3電池30本
借方 貸方 摘要
消耗品費 1,000円 現金 1,000円 単3電池30本

摘要欄は、具体的な取引内容を記載し、事後のチェックを行いやすくするためのスペースです。消耗品費で処理する場合は摘要欄に、購入した商品の詳細を記載しておくと安心でしょう。

 

3-2. 事務用品の未使用分があるときの仕訳方法

購入時点で事務用品の購入費用の全額を経費計上し、決算時に未使用分がある場合は、「貯蔵品」や「消耗品」への振り替えが必要です。以下は、10本まとめて購入した、1本100円のボールペンのうち2本が未使用だった場合の仕訳例を示します。

・購入時点で記帳

借方 貸方 摘要
事務用品費 1,000円 未払金 1,000円 未使用のボールペン2本

・期末に記帳

借方 貸方 摘要
貯蔵品 200円 事務用品費 200円 未使用のボールペン2本

・翌期首に記帳

借方 貸方 摘要
事務用品費 200円 貯蔵品 200円 未使用のボールペン2本

上記の処理では貸方に「事務用品費」を記載して、購入時に計上した費用の一部を取り消した後、翌期首に再度事務用品費として振り替えています。

 

3-3. 備品の仕訳方法

取得価額が10万円以上かつ使用可能期間が1年以上の事務用品の購入時には、備品などの勘定科目で資産計上を行います。15万円のパソコンを現金購入した場合の仕訳例は、以下の通りです。

借方 貸方 摘要
備品(※) 150,000円 現金 150,000円 パソコン1台

※パソコンを一括償却資産として扱う場合には「一括償却資産」

パソコンを一括償却資産として扱う場合は3年間で均等償却できるため、決算時に以下の処理を行って、減価償却してください。

借方 貸方 摘要
減価償却費 50,000円 一括償却資産 50,000円 パソコン1台

パソコンを少額減価償却資産として処理する場合には購入年度の決算で、以下の処理を行いましょう。

借方 貸方 摘要
減価償却費 150,000円 備品 50,000円 パソコン1台

事務用品を一般的な固定資産として扱う場合は、自社の経理ルールに沿った計算方法で減価償却費を求め、適正な金額を損金算入してください。

 

3-4. 雑費の仕訳方法

事務用品の購入費用を雑費として処理する際には、以下の仕訳を行います。

借方 貸方 摘要
雑費 1,000円 現金 1,000円 ノート10冊

決算時に未使用分がある場合には、事務用品費や消耗品費として処理した場合と同様、「貯蔵品」などの勘定科目へ振り替える処理が必要です。

 

まとめ

事務用品の購入費は、基本的に「事務用品費」として消耗品費と分けて計上するのがおすすめです。また、取得価額が10万円以上かつ使用可能期間が1年以上の事務用品を購入した場合は、備品費の勘定科目で計上し、固定資産として処理する必要があります。備品費を経費として計上するときには、少額減価償却資産や一括償却資産の特例があるため、各取引単位ごとの費用が特例で定められた金額内に収まっているかチェックしてください。

また、会計処理には継続性の原則が存在します。事務用品費・消耗品費・雑費などの会計処理は、どのように処理するかを社内でルールとして決めておき、一度決めたルールは守りましょう。