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損益計算書の各勘定科目はどんな意味?項目別の見方や計算方法を解説

損益計算書は、企業の1年間の経営成績を示す重要な決算書類で、企業の収入と費用を集計し、期間内にどれだけの利益を上げたかを明確にするために作られます。損益計算書には収益・費用・利益の3要素が含まれており、それぞれの要素には細分化された勘定科目があります。企業の財務活動を知るためには、各勘定科目の意味について理解するのが大切です。

この記事では、損益計算書の各勘定科目の意味と、具体的な見方や計算方法について詳しく解説します。

 

1.損益計算書とは

損益計算書とは、企業の1年間の経営成績を示す決算書類です。企業の収入と費用をまとめたものであり、決算期間内にどれだけの利益を上げたかを示します。英語で損益計算書を表す「Profit and Loss Statement」を略して「P/L(ピーエル)」と呼ばれることもあります。

損益計算書を構成するのは、収益・費用・利益の3つの要素です。収益から費用を差し引くことで、最終的な利益がいくらなのかを計算します。また、利益はさらに「売上総利益」「営業損益」「経常損益」「税引前当期純利益」「当期純損益」の5つに分解されます。

 

2.損益計算書の勘定科目

損益計算書には、「収益」と「費用」のいずれかに分類される勘定科目を記載します。一般的に、損益計算書に記載される科目は以下の8つです。

収益 売上高
営業外収益
特別利益
費用 売上原価
販売費および一般管理費
営業外費用
特別損失
法人税等

それぞれの意味や具体的な勘定科目について解説します。

 

2-1.売上高

売上高とは、企業が商品販売業やサービス提供などによって獲得した売上金額のことです。売上高は損益計算書の収益に分類される勘定科目であり、企業の主要な収入源にあたります。

売上高は原価や費用などを考慮せず、売上に伴う入金額をシンプルに示すものです。例えば、10万円の商品が売れた場合、10万円がそのまま売上高として計上されます。なお、売上値引や売上返品、売上割戻しについては売上高から控除されます。

売上高は、建設業では「完成工事高」、医療の分野では「外来診療収益(入院診療収益)」とも言い、業界によって呼び方はさまざまです。

 

2-2.売上原価

売上原価は、商品の仕入れや製造をする際に発生した費用のことです。商品が販売された、あるいはサービスが提供されたタイミングで計上されます。

売上原価の計上に用いられる勘定科目は以下の通りです。

期首商品棚卸高 前期末棚卸で在庫になり、当期に繰り越された商品の金額
当期仕入高 当期に販売する商品の仕入金額
仕入値引 売上品のうち、不良品や破損品など仕入高から控除される商品の金額
仕入返品 品質不良などで商品を返品する際に、買掛金の減額や払戻金を仕入高から控除するための科目
仕入割戻し 一定期間内に大量の購入をした仕入先から、代金が一部返還されるときに使う科目
期末商品棚卸高 当期末に在庫として残り、来期に繰り越す商品の金額

なお、売上原価が少額になりやすいサービス業では、基本的に「期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高」で売上原価を算出できます。一方、製造業や飲食業では、材料費や労務費、諸経費といった明瞭な費用のほかに、人件費や燃料費などの直接的にコストを把握できない費用もあります。そういった間接費についても、売上原価(製造業の場合、製造原価)として決められた方法で配分することが必要です。

 

2-3.販売費および一般管理費

販売費および一般管理費(販管費)は、製品やサービスの販売・提供・管理に間接的にかかった費用の合計金額を指します。販売費および一般管理費の対象となる主な勘定科目は以下の通りです。

役員報酬 役員報酬の支給金額
役員賞与 役員報酬のうち、賞与金額
給料手当 社員に支払った給与や諸手当の金額
雑給 パート・アルバイト等有期雇用の従業員に支払った給与や諸手当の金額
外注費 業務委託契約をした相手に支払った金額
広告宣伝費 広告宣伝施策に使った金額
交際費 顧客などに接待や贈答をした時に支払った金額
旅費交通費 従業員の交通費や宿泊費
水道光熱費 水道代やガス代、電気代としてかかった費用
租税公課 所得税、相続税、住民税などを除く租税公課(公的な課金や過料)の支払い金額
地代家賃 土地や建物の使用料
賃借料 土地や建物以外、機械類や什器の借り賃
通信費 電話料金や郵便代、ネット使用料などの費用
消耗品費 文具や紙など、事業に使う消耗品の費用
減価償却費 固定資産の減価償却を行う際に使用する科目

例えば、広告宣伝費や販売員として働く従業員の給与、取引先との交際費などは「販売費」に、消耗品や通信費、オフィスの家賃などは「一般管理費」にあたります。

 

2-4.営業外収益

営業外収益とは、本業以外の活動で得られる収益のことです。営業外収益に該当する主な勘定科目は以下の通りです。

受取配当金 ほかの法人からの利益配当や、投資信託による利益などの金額
受取利息 預貯金や有価証券の利息
為替差益 為替相場の変動により発生した利益
仕入割引 支払期日より早く買掛金を支払うことで受けた割引の金額
有価証券売却益 有価証券を売って得た利益
有価証券評価益 保有する有価証券の時価と帳簿価額の差額処理に使う科目
貸倒引当金戻入益 貸し倒れに備えてあらかじめ計上しておく勘定科目「貸倒引当金」を戻し入れるときの会計処理に使う科目
雑収入 本業以外の重要性の低い収入

投資の収益や、所有する建物・駐車場で得られる賃貸料などが営業外収益にあたります。なお、雑収入とは、ほかの勘定科目に当てはまらない少額の収入を指します。

 

2-5.営業外費用

営業外費用とは、本業以外の活動で継続的に発生する費用のことです。以下の勘定科目は営業外費用にあたります。

支払利息 借入金や社債の利息
売上割引 支払期日より早く買掛金を支払われたことで行った割引の金額
手形売却損 手形割引の際に差し引かれる、満期日までの利息相当額との差額
為替差損 為替相場の変動により発生した損失
有価証券売却損 有価証券を売ったときの損失
有価証券評価損 保有する有価証券の時価と帳簿価額の差額処理に使う科目
雑損失 本業以外の重要性の低い損失

企業における最も一般的な営業外費用は、銀行などに支払う借入金の利息です。

 

2-6.特別利益

特別利益とは、企業の業務内容とは直接関係しない、臨時的もしくは偶発的に発生した利益のことで、「特利」と略される場合もあります。特別利益に計上される一般的な勘定科目は以下の通りです。

固定資産売却益 土地や建物といった固定資産を売却したときの収益
保険差益 災害時に保険会社から受けた保険金額が、受けた被害金額より大きい場合に、超過金額を計上する科目
償却債権取立益 貸倒処理済みの債権を回収したときの金額
前期損益修正益 前期の会計処理ミスを修正したときに発生した利益
投資有価証券売却益 売買以外の目的で保有していた有価証券を売却することで得られた利益

災害に遭った際に受け取った保険金や、施設の移転で土地・建物を売却した際に得られた利益なども特別利益に計上されます。

 

2-7.特別損失

特別損失とは、企業の業務内容とは直接関係しない、臨時的もしくは偶発的に発生した損失のことです。以下のような勘定科目は特別損失に該当します。

固定資産売却損 土地や建物といった固定資産を売却したときの損失
固定資産除却損 不要になった固定資産を廃棄するときに発生した損失
災害損失 災害などによって受けた損害や、災害後の後処理で発生した費用
前期損益修正損 前期の会計処理ミスを修正したときに発生した損失

災害で損壊した企業の建物・設備の額や、施設の移転で土地・建物を売却して損失が出た場合などには、特別損失に計上します。

 

2-8.法人税等

法人税等とは「法人税、住民税および事業税」の略称であり、法人が納める税金のことです。以下の勘定科目が法人税等に該当します。

  • 法人税、住民税および事業税
  • 法人税等調整額

法人税、住民税および事業税は、法人税や住民税、一部の事業税といった確定した税金のことです。さらに、法人税法上の課税所得と、会計上の利益から税金計算した結果との間に生じた差額を解消するために、法人税等調整額が用いられます。

 

3.損益計算書の勘定科目を使った計算方法

損益計算書から分かる、「売上総利益」「営業損益」「経常損益」「税引前当期純利益」「当期純損益」の5つの利益について、意味や計算方法を紹介します。

名前 計算方法 内容
売上総利益 売上高-売上原価 企業が本業によってどれだけの利益または損失を出したかを把握できる項目です。粗利とも呼ばれます。
営業損益 売上総利益-販売費および一般管理費 本業における営業活動でどれだけ稼いだかを把握できる項目です。売上総利益から、商品・サービスを販売する際に発生する経費を差し引いて計算します。
経常損益 営業損益+営業外収益-営業外費用 本来の事業活動以外の収益・費用も含めた全体の儲けを把握できる項目です。営業利益が多くても、借入金の返済といった営業外費用が大きければ、経常利益は少なくなります。
税引前当期純利益 経常損益+特別利益-特別損失 経常損益に特別損益を加味した項目です。その期に納めるべき法人税などの税金を支払う前の利益額となります。
当期純損益 税引前当期利益-法人税等(法人税+法人住民税+法人事業税) 決算期における企業の最終的な利益または損失です。当期純損益がマイナスの場合は赤字ということになります。

損益計算書を見るのに慣れてない方は、まずは経常損益の項目をチェックするのがおすすめです。経常損益を見れば企業が事業全体で得た利益または損失が分かり、企業の経営状態を判断しやすくなります。例え売上総利益が高くても、売上以上に多くの費用を使っていれば利益は低くなり、儲けている企業とは言えなくなります。

損益計算書は就職・転職先の経営状態を分析できるポイントでもあるので、内容や見方を覚えておくとよいでしょう。

 

まとめ

損益計算書は企業が1年間でどの程度の利益を出したのかチェックできる、企業の成績表とも言える計算書類です。各勘定科目から「売上総利益」「営業損益」「経常損益」「税引前当期純利益」「当期純損益」を算出でき、儲けられている企業とそうでない企業を判別できます。

損益計算書を確認するときだけでなく、作るときにも各勘定科目の意味を理解しておくのは大切です。どういった科目が使われるのか、それぞれの科目にどの金額をあてはめればよいのか分かっていれば、正確な損益計算書を作れるでしょう。